1.開業費用と資金調達の準備
飲食店は、実店舗を伴いますので、先行資金・費用が必要です。
ご用意いただく飲食店開業資金は、融資を受ける場合、総資金の50%以上が目安です。
以下、自己資金1,000万円、融資1,000万円の場合の資金配分例です。
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物件取得費~100平米:33坪~家賃40万円×6倍=240万円
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内外装費(看板込み)~平米当たり8万円×100平米=800万円
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設備費(厨房設備中古混在+設置)=250万円
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家具費(椅子・机・レジ回り)50席×4万円+20万円=220万円
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什器費(皿・ナイフフォークなど)50席×2万円=100万円
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販促物・広告費(ロゴ・メニュー表・名刺・パンフレット)=50万円
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準備人件費(社員3名2か月+アルバイト8名2週間)=160万円
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その他設備(レジ・BGMなど)=30万円
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運転資金(OPEN前家賃+3か月分運営費)=150万円
飲食店の開業において、重要なのは、運転資金をいかに残すかです。
実際問題、よさそうな飲食店なのに、開業時に資金の配分をきちんとしなかったために、運転資金の枯渇で継続が難しくなっていきます。
飲食店開業に至るまでに、たくさんの業者さまに動いてもらわなくてはいけません。
しかし、飲食店開業後でも、すぐに売上によりお金が増えるかどうかは、ケースバイケース。
開業準備にじっくり時間をかけてやりすぎると、その期間の家賃や人件費が無駄になり、
逆に開業を急ぐと、抜け漏れ教育やレシピ調整が不十分で、お客さまの満足度が下がり、オープン景気のあと、閑古鳥ってこともあります。
資金の配分と、スピード感がどちらもなければ、そういうことが待っていることを頭に入れておいてください。
2.飲食店開業におけるコンセプトの立案
おいしい食べ物があり、おいしい飲み物があり、そこそこのサービスがある。
最初は、それだけそろえば、お客さまは来ていただけるでしょう。
一方、お客さまが「飲食店に来ていただくこと」に、喜んでいてはいけません。
その飲食店に「経営が成り立つ売上があるのか」、ということの間には、大きな隔たりがあります。
「いいものをかき集めれば、いい飲食店が開業できる」、、、というのは本当の意味では正しくありません。
お客さまにとっては、そのひとつひとつの「良さの組み合わせ」こそ大事です。
当たり前すぎないでどこかユニークであること、それをどう表現するのか、以下は、コンセプトを作るポイントを書いています。
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ターゲットコンセプト
まさに飲食店開業のスタートはここからです。
どのようなお客さまに来ていただきたいのでしょうか?
「男性・女性」「年齢」「収入」切り口を様々に、立地、商品の価格、表現、内装が決まります。
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商品コンセプト
ターゲットになるお客さまに、どういう商品を食べていただくのでしょうか。
「濃い味 薄い味」「量の多い少ない」「盛り付けがきれい、シンプル」お客さまのニーズとの親和性が問われます。
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立地コンセプト
どのような場所に飲食店を出店しますか?
「都会 田舎」「ロードサイド 駅前 住宅地 オフィス」お客さまがいそうなところか、通りそうな場所でなくてはなりませんし、ただ通るだけではいけません、お客さまの財布が緩むような、お金を使うモードでなくてはいけません。
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店舗コンセプト
お店のつくりはどうしますか?
「ゴージャス チープ」「派手 地味」「目立つ 隠れ家」「演出は」お客さまが、心地よく食事をし、気持ちよくお金を使っていただく、そういう飲食店作りをしなければなりません。
広さや席数も、重要な要素。
もちろん、ターゲットがどのような人なのかを忘れずに。
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イメージコンセプト
お客さまの好む「質感」・・例えば布と金属では大違い。
「色」やデザインも考慮します。
器も「土感 磁器質」などあって、とても重要な部分です。
内装、商品、メニュー表などすべてにかかわって来ます。
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価格コンセプト
様々な方向から、商品価格は決めなくてはなりません。
例えばターゲットにするお客さまの想定収入から、「日常食 ハレ食」どちらの利用動機を狙いますか?
もしくは、「デート ファミリーユース」どちらですか?
「月何回程度利用」を想定してますか
周囲の飲食店や想定する競争相手との比較も必要です。
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サービスコンセプト
様々なことが決まってきたら、どういうサービスをするかも決まります。
まず「元気がいい 静かに落ち着く」どちらでしょうか?
「ファストサービス フルサービス」どちらでしょうか?
予約を受ける飲食店でしょうか?
お客さまは何分くらいその飲食店に滞在するのでしょうか?
お客さまの利用動機、価格を鑑み、バランスの取れたサービスをしなければなりません。
それがわかって初めて教育をすることができます。
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販促コンセプト
いよいよ最後、販促です。
開業までに、やるべきことの重要な一つ、今までのコンセプトすべてを、どうやってターゲットになるお客さまに伝えるのでしょうか。
広告の手段は、、、無料配布誌ですか、折り込みチラシですか。
今はSNSは必須ですし、有料のレストランポータルに登録はしますか?
(FACEBOOK・INSTAGRAM・TWITTER・LINE@)
それぞれに全体のコンセプトのマッチングのいい販促方法を取ってください。
例えば、高年齢の方がターゲットの場合、紙媒体がいいです。
これらすべて、飲食店として、統一性があり、ターゲットを意識しておかなくてはなりません。
それが繁盛飲食店の始まりです。
3.商品設計
コンセプトが決まったら、飲食店の開業準備で最も重要なひとつの商品設計です。
以下のように、順序良く考えます。
安易に、料理を作って「材料費が300円だから売価1,000円で原価率30%でいい」と考えてはいけません。
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商品構成
飲食店において、どういう商品構成にするかは本当に重要。
「メインメニューが目立つ飲食店」OR「様々なメニューがある飲食店」まずそこから決めなくてはいけません。
ほぼ、最初に飲食店開業前に考えるメニューの数は、多すぎる傾向があります。
材料ロス、教育ロス、商品の安定性を考えると、少ないほうが運営コストは勝りますから。
一方、商品が少なすぎたら、お客さまが連続でその飲食店を利用しづらい。
とはいえ、思い出していただきたいのは、「一般的に毎日同じところで外食はしないんです。」
少なくとも、「数件は行く飲食店を変えている」のが現実です。
特に、昼食べた飲食店には夜はなかなかいきません。
そういうことから利用頻度を考慮して、ロスの出ないレベルまでメニュー数を絞り込みます。
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材料の吟味
オリジナリティ、、、それも重要な要素。
それを支えるのが、希少な食材です。
この飲食店でしか食べられないものをどう作るかは、料理の腕も大事ですが、食材にもかかっています。
開業までに、十分そこを検討しましょう。
また、ユニークであることも重要ですし、もうかることも重要です。
お客さまに割安感を与えるのは、そういう食材と出会うこと。
B級品、廃棄前のもので料理に使ってもおいしいものは、飲食店に利益をもたらしてくれます。
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調理工程
直前に複雑な調理をしてしまう料理ばかりだと、お客さま一人に出すのには問題ありませんが、たくさんのお客さまが違うタイミングでその飲食店に訪れて、それを待たせることなく、料理を出すことは難しいです。
そういう場合、中間製品(仕込み品)でそこをカバーします。
あまり、仕込み品に頼りすぎても、料理の質を落とします。
特に業者さま提供の加工品に頼りすぎれば、スタッフは楽にはなっても、飲食店としての利益は出ませんし、お客さまもどこかで食べた味と飽きが早く、リピートには逆効果です。
オリジナリティとおいしさをとどめながら、素早く出すためにどう仕込み品を作るのか、そこが利益を出すポイント。
仕込みも作りすぎないように、また、曜日ごと時間帯ごとに作業が集中しないように設計します。
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バリューと価格設定
価格は最も重要です。
それだけで、飲食店の存続が決まるといっても過言ではありません。
お客さまにとって、バリューを感じる価格でなくてはなりません。
バリューを感じるということは、簡単に言えば、再利用してもよいと思うこと。
このバリュー、考えるうえで本当に厄介で、様々な要素で決まります。
おなかいっぱいで、おいしくて安い、、、だけじゃない。
盛り付けでもいくらでもバリューは変わるし、使っている食材をお客さまにお伝えするだけでも変わる。
心理学のようなものと思ってください。
だからお客さまのご負担費用に対するバリューを出すために工夫が必要です。
工夫された料理はバリューを生み、お店に利益をもたらします。
一方、安ければいいじゃないかと思う向きがありますが、それこそ最もやってはいけないこと。
飲食店は、お金を払う価値がなければ、存続できない存在です。
開業までに、早くお金を払う価値がある飲食店にならなくてはなりません。
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原価計算
私共も当然ながら、商品の原価計算をします。
商品を試作している段階から、想定原価率を考えながら設計します。
それが、大まかにどれくらいかわかっていても、実際計算してみると、以外に合わないものが出てきます。
意外に儲かる商品も出て来ます。
しかし、大切なのは、先ほども申しましたバリューです。
原価が安いからと言って、価格を落としてはいけません。
お客さまがその商品を食べてお金を払ったとき、どう感じるかが大切です。
もう一度食べたいと思う商品なら、そのまま強気の価格でいきますし。
高い原材料を使っても、お客さまにバリューをもたらさない商品も出てきます。
そういう見直しをしながら、看板メニューを作り上げていきます。
看板メニューは、商品開発において、そういうプロセスで出来上がります。
やがて、価格、商品、仕込みが大まかに決まってきますが、それが、飲食店開業を実際行うときは、順序良く一つ一つやっていくことはできません。
どういうことかといいますと、すべて同時進行です。
例えばメニューが決まらない間に、厨房設備工事が始まるのが常です。
すべてが、決まってしまわないで、想定の中で見切り発車していきます。
最悪なのは、飲食店ができた後、働きにくかったり、厨房設備が余剰だったり、足りなかったり。
たくさんの飲食店を開業した経験がなければ、それをうまくやることはできないでしょう。
そこが弊社をご検討いただく理由でもあります。
4.事業計画
これから後は、事業計画書(※弊社で作成します。)の作成に入ります。
ここまで考えられたことが、実現できるのでしょうか。
また、飲食店が開業できたとき、利益が出るお店になるのでしょうか。
「飲食店が開業した時点で、すでに利益が出る可能性がなかった、、、」そうなることは、実はよくあります。
たとえば、「郊外型の飲食店で、駐車場が満杯なのに、席が半分しか埋まってない。」
計画上は70%埋まらないと黒字化しない、、、こんな場合は、計画の見落としです。
こういった、落とし穴が、いたるところに待ち受けています。
それをいかに回避するか、それこそ繁盛店への道程と言えるでしょう。
そのためには、実際の予定図面(※弊社で作成しますので早いです。)や駐車場や周囲の飲食店などの状況を踏まえた、事業計画が必要です。
飲食店開業における融資関係(※計画をもとに一緒に作ります。)の資料は、この段階で初めてちゃんとしたものが書けます。
5.届出・手続き関係
- 税務署の届出は出店が決まったら行ってください。
- 保健所の届出や手続きは、正式図面ができてからで結構です。指定講習を受講し、食品衛生責任者を取得してください。
- 営業許可は、引き渡しからでも間に合います。
- 消防関係の届出手続きは、ビルインテナントの場合、貸主さんに防火責任者がいるかを確認し、いなかった場合、消防署で日程を伺い、防火責任者講習を受講し、届出を出します。
ここまで来たら、繁盛飲食店の第一関門を通過したといえます。