飲食店開業プロデュース、飲食店経営コンサルティングをしている松島です。
日本は、舌が肥えた人が多いお国柄だと言われているようです。
わたしも、アメリカをはじめ東南アジアで仕事をしましたけれど、日本人は舌が肥えていると思います。
電化製品にしても何にしても、細部の機能には、すごく感心しますが、そんなことも関係しているのでしょうか。
一方、「そんな機能いったいいつ使うのか。」ということもありますね。
さて、今回は「こだわりとは」ということを書いてみます。
最近、関わることが多いので、スパゲッティ―のお話も絡めてみます。
「こだわり」とは何なのでしょう。
辞書でひくと「こだわること」と書いてあり、無限ループ状態です(笑)。
さて昨今「こだわる」ことは、良いことのように飲食店ではよくつかわれるのですが、
「こだわる」は色々調べると、2種類の意味を持っています。
1.「つまらないことにこだわる」・・・・つまりマイナスの意味
2.「凝る」「心を込める」「品質を高くするためにあえて手を加える」「原料を厳選する」など・・・・つまりプラスになりえること
しかし、実はずっと以前には、「こだわる」はマイナスの意味しか持たなかった。
いわゆる頑固の結果・・・というのでしょうか。
飲食店において、何にこだわるべきなのでしょうか・・・・それは、「つまらないことにこだわる」ことになっていないだろうか。
まさにそこが、繁盛のキーポイントになっているように思います。
スパゲッティ―の話をしてみましょう。
これは実際にあった話です。
そのお店は、もう十数年もスパゲッティ―を中心のイタリアンをやっています。
かつては大繁盛したお店ですが、最近は売上が徐々に落ちてきました。
そこのお店のこだわりは何かというと、「トマトソース」です。
何にこだわっているかと言いますと、
「トマトのホール缶」を使っているのですが、その缶詰の種類と、
缶詰といえども、何年も使うと「中のトマトのばらつきがあることに気付いた。」というのです。
そのお店のオーナーには、そこが「こだわり」だと言われました。
うーん・・・それをこだわりというのでしょうか。
お客さまにアピールできるポイントなのか・・・考え込んでしまいました。
皆さんはどう思われますでしょうか、それが良い「こだわり」というのでしょうか。
缶詰を使うこと自体が、有益な「こだわり」の範疇から外れていますよね。
「つまらないことにこだわる」状態になっているのではないでしょうか。
それをお客さまが聞いたり知ったりしたとき「へーすごい」と思うのではなく、
「なーんだ、缶詰か」と思うひとが多いからでしょう。
オーナーは、誰も注意してくれません。
だから「つまらないことにこだわる」傾向が生まれやすい。
最も改善しなくてはならないことはオーナー自身が「何にこだわるか」ということではないかと思うのです。
さて、ほどなく、私どもは、そのスパゲティー屋さんに「生パスタにしましょう、今のこだわりは伝わりません。」と提案しました。
それが、よりお客さまに伝わると思ったからです。
日本人が蕎麦にこだわるように、イタリア人はパスタにこだわります。
日本では、押さえて伸ばした手打ちの麺も、「生スパゲッティー」と言っているようですが、
イタリアでは違います。
生パスタの機械は色々あるのですが、押出し式の麺機で出るパスタのみを「スパゲティー」と言います。
それと、材料ですが「デュラムセモリナ粉」を使ったものです。
「デュラム」とは何かと言いますと「硬質小麦」のことです。
その中でもパスタ専用の小麦は「デュラム小麦」と言われています。
硬質の「硬い」とは何かというと、ふ質の硬さです。
「ふ質」とは何か・・・・・・小麦粉を少しの水と混ぜて練った後、水の中でもむと水に溶け込んでいくものと、
手元に残るゴムのような物質に別れます。
このゴムのような物質が「ふ質」であり、それが何かというといわゆる「グルテン」=「たんぱく質」です。
これから日本では「お麩」を作るので「ふ質」と言います。
その「ふ質」が多くて硬いのが硬質小麦です。
その中でも、デュラム小麦は、他のパン用の硬質小麦と遺伝子レベルの染色体数が違っていて、
パン用小麦を普通系といい、デュラム小麦は2粒系と言います。
要するに、小麦(たんぱく量10~14%の2粒系硬質小麦)が他の小麦製品とは違うのです。
さて、ではセモリナとはなんでしょうか。
セモリナとは「粗挽き」のことです。
ここまで来ると、いかに本場の生スパゲティーを日本で食べるのが難しいかわかると思います。
それにこだわるのが、有益な「こだわり」でわないかなぁとおもうのです。
お客さまにしても、食べてみたくなる仕掛けになります。
それよりも、さらに、一番お客さまに伝わるこだわりは、「スパゲッティーの食感」になると思います。
スパゲティーのもちもち感を出すのか、シコシコ感を出すのかで、寝かせの時間や水や卵の量が変わります。
オーナーが決めることは、どの食感のスパゲッティーを出すのか・・・・ということに「こだわる」ことが最重要です。
もちもち感を出すには、当然ながら、やや太めのスパゲッティーになりますし、水分は多めです。
よりシコシコ感を出すには、ちゃんと1日は寝かせないと出ません。
ちょっと長くなりましたが、お客さまに伝わるこだわりとはそういう「こだわり」であって、
「つまらないことにこだわってないか」ということを考えなくてはなりません。
お客さまにとって「また、食べてみたくなるこだわり」こそ、売上につながるこだわりだと、私は思うのです。
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さて、以下は余談として、興味のある人は読み進んでください。
押出し式のパスタをスパゲッティーと呼ぶと言いましたが、さらに言うとその押し出す型があって、
そこでスパゲッティーの味が変わってきます。
機械の先に押出しの型がついているのですが、それが青銅製のものか、テフロン加工しているものかで違います。
その型のことををダイスと言います。
ダイスが青銅製のものは、押し出すときに金属の表面に凹凸があるために、スパゲッティーの表面がザラザラになります。
この麺の表面の状態を「ルヴィダ」と呼びます。
ルヴィダの麺は、表面積が大きく、水を吸いやすいので茹でると伸びやすく、麺のおいしい時間は短いです。
また麺を茹でるお湯もにごりやすい。
その一方、麺がソースと絡まりやすく、少ないソースでも麺が楽しめます。
テフロンのダイスは表面がツルツルでこの状態を「リシャ」と呼びます。
リシャの麺はお湯を吸いにくく、伸びにくい。
一方、ソースが麺に乗りにくい。
ここまで来ると、家庭では絶対できない、
わざわざ食べに行きたいスパゲティー屋さんになる資格があるお店になることができます。